内縁の妻となって何年経過すれば相続人になれる?よくある誤解と注意点を解説

内縁の妻となって何年経過すれば相続人になれる?よくある誤解と注意点を解説

内縁の妻として長期間が経過すれば法定相続人になれると考えている方が少なくありませんが、これは事実ではありません。

ただし、法定相続人でなくとも遺産を相続できるようにする方法があります。

本記事では、内縁の妻が法定相続人になれるかどうかについてや、遺産を相続できるようにする方法、注意点などについて詳しく解説します。

内縁の妻に遺産を相続させたいと悩んでいる方は、相続問題に強い弁護士法人アクロピースにご相談ください。

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目次

内縁の妻は何年経っても法定相続人になれない

夫婦

内縁の妻は、内縁関係になってから何年が経過しても、内縁の夫の法定相続人にはなれません。

法定相続人とは、民法で定められた「被相続人の財産を相続する権利を持つ人」を指します(民法886~890条)。

具体的には、配偶者、子供、親、兄弟姉妹などで、内縁の妻は該当しません。

内縁の妻は、婚姻関係と実質的に同様の関係にあっても、法律上は正式な配偶者とは認められないため、法定相続の権利を持ちません。

これにより、内縁の夫が遺言を残していない場合、内縁の妻は財産を相続できず、全財産が法定相続人に分配されることになります。

ただし、法定相続人ではなくとも、被相続人の遺産を相続する方法があります。

内縁の妻との間にできた子どもは法定相続人になれる場合がある

内縁の妻との子

内縁の妻との間に生まれた子どもは、認知されることで法定相続人になることができます。

認知とは、法律上の手続きを通じて、父親がその子どもを自分の子として認める行為です(民法779条)。

認知された子供は法的に父親の子となるため、法定相続人になることができます。

父親の死後に認知されても、認知により原則として出生の時から効力を有しますので(民法784条本文)、相続人となります。

内縁の夫が内縁の妻との間に生まれた子供を認知する方法については以下のとおりです。

なお、子供から認知の訴えを起こし、認知を求めることも可能です。

認知の種類説明
胎児認知子どもが生まれる前に、父親が市区町村役場で認知届を提出します。子どもが生まれた時点で法的に父親との親子関係が確立されます。
出生後の認知子どもが生まれた後に、父親が認知届を提出します。子どもが成年に達する前であれば認知が可能です。
遺言による認知父親が遺言書に子どもを認知する旨を記載することもできます。遺言書が有効である限り、父親の死後に認知が成立します。
  

内縁関係とは、婚姻届を提出していないものの、夫婦となる意思を有して、実質的に夫婦として共同生活を営んでいる男女の関係のことです。

内縁関係にあると認められるかどうかにはさまざまな要素が関係するうえに、何年一緒にいれば内縁関係になれるという基準はありません。

以下のような場合に、内縁関係にあると認められやすくなります。

  • 結婚式を挙げた
  • 夫婦で親族や友人の結婚式に出席するなど周囲の人に夫婦として認識されている
  • 契約書や公的な手続き書類の続柄の項目に「(内縁)妻」「(内縁)夫」などと記載している
  • 生計を一にして長期間同居している
  • 住民票上で同一世帯としている

なお、内縁関係と証明することが必要になるケースは次のとおりです。

  • 内縁関係の妻・夫が不貞行為をした際に慰謝料を請求する
  • 正当な理由なく一方的に内縁関係を解消された際に慰謝料を請求する
  • 内縁関係を解消する際に財産分与をするよう請求する

このように、内縁関係を証明しなければならない事態になった際に内縁が認められることを推認させる資料を裁判所へ提出し、内縁関係と認められるかどうか判断されることになります。

内縁の妻に相続させる5つの方法

妻

内縁の妻に相続させる方法は、下記の5つです。

それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。

生前贈与

生前贈与とは、被相続人が生きている間に、自身の財産を与えることを指します。

生前贈与の対象は法定相続人に限らないため、妻にも生前贈与ができます。

また、被相続人が死亡したときに効果が発生する死因贈与もあります。

もっとも、被相続人が生前に契約を行い、内縁の妻に財産を与えるという意味では、生前贈与と違いはあまりないので生前贈与と同様に検討しましょう。

死因贈与とは
死亡を原因とし財産を無償で渡すと生前に決める贈与

死因贈与について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:死因贈与とは?贈与契約書の書き方も解説

生前贈与と相続の違いを理解することも重要です。

生前贈与は生前に行われるため、受贈者の意思を確認しながら贈与でき、年間110万円までは贈与税もかかりません。

一方、相続は贈与者の死後に行われるため、遺言書がない場合や相続人全員の合意が得られない場合には、希望通りに遺産を分配できない可能性があります。

また、相続人が生前贈与を受けた場合は特別受益となり、相続財産に持ち戻して相続分の計算が必要です。

なお、内縁の妻が相続人にならないので、原則として特別受益とはみなされません。

生前贈与と特別受益については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:生前贈与と特別受益の関係とは?計算方法についても解説

遺言書による遺贈

遺贈とは、遺言書で遺産を贈る相手を指定する行為です(民法964条)。

対象者は法定相続人を除く個人および団体のため、内縁の妻にも遺贈できます。

たとえば、被相続人が「全財産を内縁の妻に遺贈する」という内容の遺言書を作成します。

この場合、法定相続人が他にいる場合でも、遺留分を除いた部分について内縁の妻に財産を遺贈することが可能です。

遺留分は、法定相続人(兄弟姉妹を除く)が最低限受け取れる遺産の取り分のことで、内縁の妻に全財産を相続させる旨を遺言書に記載しても、遺留分侵害額請求をされることで遺留分に相当する金額は相続人に支払わなければなりません(民法1042条)。

内縁の妻に遺贈したい場合の遺言書の書き方については、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:【例文付き】遺言書の書き方とは?必須項目や注意点を解説

特別縁故者として財産を受け取る

特別縁故者とは、被相続人(亡くなった人)と特別な縁や関係を持っていた人のことです。

具体的には、被相続人と長期間にわたり共同生活を営んできた内縁の妻や、その他特別な関係にあった人が該当します。

内縁の妻が家庭裁判所に特別縁故者の申し立てを行い、認められた場合には、相続人として遺産の分与を受けることができます(民法958条の2第1項)。

ただし、特別縁故者であっても、他に相続人がいる場合は財産分与ができません。

たとえば、離婚した法律上の妻との間にできた子は法定相続人になるため、内縁の妻は財産分与を受けることができなくなります。

また、特別縁故者として財産分与ができるケースにおいても、相続できる財産額は裁判所が決定します。

内縁の妻も権利を主張できる契約を残す

内縁の夫が持つ契約を内縁の妻に承継できる場合があります。

賃貸住宅に住む際に交わす賃貸借契約は、同居している内縁の夫に相続人がいない場合においては内縁の妻が承継できます(借地借家法36条1項)。

なお、内縁の夫が亡くなってから内縁の妻が親族関係の戸籍を取り寄せて相続人の有無を調査するためには、弁護士への依頼が必要です。

  • 相続人がいない場合:内縁の妻にその旨と賃貸借契約を承継できる旨を伝えておく
  • 内縁の夫に相続人がいる場合:相続人との話し合いのもとで賃貸借契約を承継するかどうかを決めるものの、内縁の妻としては退去を求められると困る

もし、内縁の妻が退去を拒否した場合、強制退去の訴訟を起こされる可能性がありますが、訴訟には費用と時間がかかります。

そのため、相続人との交渉によって賃貸借契約の承継を認めてもらえることも多いようです。

また、相続人ではない内縁の妻に賃貸借を承継させる場合には、大家にも話をした上で、承継させた方がよいでしょう。

生命保険に加入しておく

内縁の妻に財産を残したい場合は、生命保険金の受取人に指定しておくことも方法の1つです。

生命保険の受取人に指定できるのは、一般的に配偶者または2親等以内の親族に限ります。

ただし、下記すべての条件を満たす場合は、保険会社によっては内縁の妻が受取人になることを認めています。

ただし、内縁の妻に残せるかどうかは保険会社に事前に確認するのが良いでしょう。

  • 内縁夫と妻の双方に法律上の配偶者がいない
  • 保険会社が定める期間において同居している
  • 保険会社が定める期間において生計を一にしている

保険会社が定める期間について事前に確認しておくことが大切です。

なお、死亡保険金は相続税の課税対象ですが、「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額が設けられています。

ただし、内縁の妻が受け取った死亡保険金には非課税限度額が適用されません。

実際に受け取れる額よりも少なくなる点に注意しましょう。

内縁の妻に相続させたい場合に弁護士に相談する3つのメリット

弁護士

内縁の妻に財産を相続させたい場合は、弁護士に相談することが大切です。

弁護士に相談するメリットは下記のとおりです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

親族との関わりを最小限にできる

内縁の妻が被相続人の財産を受け取る場合、法定相続人とトラブルになることが少なくありません。

このような状況では、弁護士に相談することが有効です。

弁護士が代理人として対応することで、内縁の妻は直接的な関わりを避けることができます。

親族との関わりを最小限にしながら、法的な手続きを進めることが可能です。

また、弁護士は豊富な法律知識を持つため、遺言書があるにもかかわらず、親族が不当な主張をしたことによって内縁の妻が相続できる財産が少なくなる心配もありません。

現状を踏まえたベストな提案を受けられる

弁護士に相談することの大きなメリットの1つは、現状に応じた最適なアドバイスを受けられる点です。

たとえば、内縁の妻が被相続人の財産を確実に受け取るためには、法的な手続きを適切に進める必要がありますが、個々の状況に応じた判断が求められます。

具体例として、被相続人が遺言書を作成している場合と、作成していない場合では取るべき手続きが異なります。

他に相続人がいないケースにおいて遺言書がない場合、特別縁故者として財産を受け取るには家庭裁判所に内縁の妻であることを認めてもらう手続きが必要です。

この際、弁護士は内縁の妻であることを認められる可能性について考え、ベストな対応方法を提案できます。

また、内縁の夫の生前であれば、内縁の妻に財産を遺すための具体的な方法についても、弁護士が現状を詳しく分析し、最も適した方法を提案します。

  • 生前贈与
  • 遺言書による遺贈 など

弁護士に相談することで、法的な手続きを正確に進めるだけでなく、個々の状況に最も適した解決策を見つけることが可能です。

内縁関係の証明についてもサポートを受けられる

内縁関係を法的に証明するためには、さまざまな書類が必要です。

内縁関係の証明は明確な基準がなく、個々の状況に応じて異なるため、専門家のアドバイスが欠かせません。

弁護士に相談することで、内縁関係を証明するための具体的な方法や必要な証拠について詳細なアドバイスを受けられます。

たとえば、以下のような状況証拠を収集し、内縁関係を立証する際に役立てることができます。

  • 同じ住所に長期間居住していることを示す住民票や郵便物、公共料金の請求書など
  • 共同で銀行口座を持っていること、生活費を共同で負担していることを示す預金通帳など
  • 結婚式の写真や、夫婦として出席を求められた冠婚葬祭での写真・証言など
  • お互いの続柄を「(内縁)妻」「(内縁)夫」と記載している契約書など

これらの証拠を適切に収集・提示することで、内縁関係を法的に認めてもらえる可能性が高まります。

また、弁護士は家庭裁判所への申立書の作成の代行も可能です。

まとめ

妻

内縁の妻に財産を相続させる方法には、生前贈与遺言書による遺贈特別縁故者として財産を受け取る方法などがあります。

これらの方法を実行するには法的な手続きが必要であり、弁護士のサポートを受けることで親族とのトラブルを最小限にしつつ、最適な解決策を見つけることができます。

内縁の妻にスムーズに財産を相続してほしい場合は、弁護士に相談しましょう。

護士法人アクロピースは累計300件以上の相談実績があり、相続問題に強い弁護士があなたに最適な解決方法をご提案します。

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この記事を執筆した人

弁護士法人アクロピース代表弁護士
東京弁護士会所属

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