遺留分侵害額請求の調停前置とは?手続きの流れとポイントをわかりやすく解説

遺留分侵害額請求の調停前置で何を聞かれるのか、どうすればいいのかわからず不安になっている方もいるでしょう。
- 裁判所に遺留分侵害額請求の訴えを起こしたいが、調停前置とはどういう意味か?
- 遺留分侵害額請求を成功させるためにはどうすればよい?
法律上、遺留分侵害額請求は、まず調停の申立てを行うことが原則とされています(調停前置)。
遺留分侵害額請求について、全体の流れと、調停前置の意味・メリットや調停の申立方法などを詳しく解説しているので、遺産が不動産しかない場合の遺留分で悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
遺留分侵害額請求には期限があります。
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遺留分侵害額請求の意味とは

遺留分侵害額請求の意味と流れについて、解説します。
遺留分侵害額請求の意味
遺留分侵害額請求とは、遺留分が遺言などにより侵害されている(相続できる財産が遺留分より少ない)場合に、遺留分侵害額相当額の金銭の支払いを求めることです。
遺留分は、法定相続人に最低限保障されている相続分です(民法1042条1項)。
被相続人は遺言により自分の財産を自由に処分する権利がありますが、遺留分を侵害する場合があります。
遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使して、遺留分を侵害して相続財産を得ている人から、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを受けられます(民法1046条1項)。
遺留分侵害額請求権は、2019年7月1日以降に生じた相続に関して適用される権利です。
それ以前に発生した相続の場合は、改正前の民法に基づき遺留分減殺による物件返還請求調停を申し立てることになります。
遺留分減殺請求は遺留分相当の物件そのものの返還を請求するという点で、金銭の支払いを求める遺留分侵害額請求とは異なります。
出典:裁判所|遺留分侵害額の請求調停
出典:裁判所|遺留分減殺による物件返還請求調停
遺留分侵害額請求については、次の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
関連記事:【遺留分侵害額請求をわかりやすく解説】計算方法・請求のやり方・注意点
遺留分侵害額請求の流れ
遺留分侵害額請求は、原則として次の流れで進みます。
1.相続人で協議する
まず当事者が話し合います。
ただし、遺留分の請求は相続開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈を知ったときから1年が経過すると請求できなくなるので注意が必要です(相続開始時から10年を経過したときも同様、民法1048条)。
協議中であっても、別途、遺留分侵害額請求の通知を内容証明郵便で送り、請求を行った証拠を残す必要があります。
2.遺留分侵害額の請求調停を申し立てる
当事者の協議がまとまらない場合は、裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。
調停では、調停委員が当事者双方の主張を個別に聞き、交渉を仲介します。
当事者が調停案に合意できれば、調停成立です。
3.遺留分侵害額請求訴訟を提起する
遺留分侵害額の請求調停が不成立となった場合、裁判所に訴訟を提起します。
遺産分割協議のように調停から審判へ移行することはありません。
訴訟では、遺留分侵害の事実を立証しなければなりません。
訴訟の準備は専門的な知識が必要なため、弁護士に依頼した方がよいです。
遺留分侵害額請求の調停前置とは

遺留分侵害額請求の調停前置とは、遺留分侵害額の請求をする場合に、裁判を起こす前に原則として調停を先に申し立てなければならないという制度です(家事事件手続法257条)。
調停を先に行わずに訴訟を起こした場合、裁判所は、職権で調停に付すこととされています(調停から始める)。
調停前置主義と言われますが、家族間・親族間の争いはできるだけ話合いで解決した方がよいとの考えによるもので、プライバシーの流出も抑えやすくなります。
(調停手続きの詳細は後述しています)
調停のメリット

調停のメリットは、主に次の6点です。
- 冷静に話し合える:調停は裁判官1名・調停委員2名が、当事者の主張を交互に聴きながら、合意を目指す制度です。 お互いが向かい合うことは基本ないので、感情的にならずに話合いを進められます。
- 解決案を提示してくれる:裁判官や調停委員が第三者的な立場から解決案を提示してくれます。
- 円満に解決を図れる:当事者の合意を基本としているため、白黒をはっきりさせる訴訟と異なり、円満に解決を図ることが可能です。
- 手続きが簡単:調停は一般の人でも申し立てできます。手続きは比較的簡単で、口頭でのやり取りがメインです。法的な専門知識がない人も取り組みやすいでしょう。
- 費用が安い:裁判所に納める手数料はトラブルの対象額に応じて決まりますが、訴訟に比べてかなり少額になります。
- 判決と同じ効力がある:当事者が合意した「調停調書」は判決と同じ効力を持ちます。実行されない場合は、強制執行を申し立てることも可能です。
参考:政府広報オンライン|身近な民事トラブルを話合いで解決「訴訟」に代わる「民事調停」
調停のデメリット

調停には、以下のようなデメリットもあります。
- 当事者間で合意できないと調停不成立
当事者の合意が前提となるため、当事者が合意ができない場合は調停は成立しません。 - 意見が通るとは限らない
解決するにはお互いの譲り合いが必要です。自分の主張を100%通すことは難しいです。 - 手間と時間がかかる
調停不成立の場合、改めて訴訟を起こさなければいけないため、最初から訴訟を起こした場合と比べて手間も時間もかかります。
調停は基本、平日の日中に裁判所に行かなければならない点にも注意が必要です。
また、相手が欠席すると、そもそも協議を進められません。相手が話合いに応じそうもないと見られるときは、すぐ次の段階(訴訟)に移行できるように準備しておく必要があります。
遺留分侵害額請求調停の流れ

遺留分侵害額の請求調停の主な流れについて、次の3点を説明します。
調停の申立て
まず裁判所に遺留分侵害額請求の調停を申し立てます。
調停申立ては相手方への遺留分に関する権利を行使する旨の意思表示にならないため、注意が必要です。
請求の通知をしていない場合は、時効で請求できなくならないよう、別に内容証明郵便等により請求の意思表示を行う必要があります。
【調停の申立方法と必要書類】
項目 | 詳細 |
---|---|
申立人 | 遺留分を侵害された者(兄弟姉妹以外の相続人)又はその承継人 |
申立先 | 相手方の住所地又は当事者が合意で定める家庭裁判所 |
申立費用 | 収入印紙1200円分、連絡用の郵便切手 |
必要な書類 | 申立書及びその写し(相手方の数の通数) 申し立て添付書類 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本 相続人全員の戸籍謄本 遺言書の写し又は遺言書の検認調書謄本の写し 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書・預貯金通帳の写し又は残高証明書等) 被相続人よりも先に亡くなっている相続人がいる場合はその戸籍謄本 |
出典:裁判所|遺留分侵害額の請求調停
調停期日
調停の申立が受理されると、第1回期日が決まり、相手方に申立書の写しや呼出状等が送付されます。
- 第1回調停期日:2か月程度先
裁判官と調停委員2名がおり、最初に裁判官から調停手続きについて説明がある場合が多いです。その後、調停委員が双方から交互に意見を聴きます。
- 第2回以降の調停期日:1~2か月間隔
第1回と同じように、調停委員が双方から交互に意見を聴きます。
両当事者は、調停期日に家庭裁判所に行き、調停委員に仲介してもらい協議し、合意形成を目指します。
調停の成立・不成立
【調停が成立すれば調停調書が作成される】
調停が成立すれば、合意内容を記した調停調書を作成します。
調停調書に従って金銭が支払われない場合は、執行文の付与を受けて強制執行が可能です。
【調停が不成立の場合は改めて遺留分侵害額請求訴訟を提起する】
相手方が交渉を拒否している場合や、合意が成立する見込みがまったくないと調停委員が判断した場合は、調停は不成立となります。
調停が不成立となった場合は、改めて裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起する必要があります。
遺留分侵害額請求訴訟の提起先は、請求額が140万円を超える場合は地方裁判所、140万円以下の場合は簡易裁判所です。
なお、調停が不成立となった場合、最短6か月経過すると遺留分侵害額請求権の消滅時効が完成するおそれがある(民法147条1項参照)ため、速やかに訴訟を提起しましょう。
遺留分侵害額請求調停をスムーズに進めるための3つのポイント

遺留分侵害額請求調停をスムーズに進めるための3つのポイントを紹介します。
請求の根拠となる資料を準備しておく
請求の根拠となる資料を整理して準備しておきましょう。
たとえば、次のような資料を準備しておくとよいです。
- 遺言書・生前贈与などの資料
- 相続財産の価額等の資料
- 不動産の贈与によって遺留分侵害が生じた場合、不動産の評価額を示す資料
- 遺留分の計算方法をまとめた資料
調停は裁判のように準備書面や証拠を提出する必要はありませんが、相手が請求に応じない場合は、自分の正当性を調停委員にきちんと伝えなければなりません。
主張したい内容を書面にまとめ、相続財産の評価等の資料と併せて裁判所に提出しておくと、調停委員や裁判官に自分の主張をスムーズに理解してもらいやすくなります。
可能な妥協点を決める
事前に受け入れ可能な妥協点を決めておくと、柔軟に対応できます。
たとえば、次のように妥協点を決めておくとよいでしょう。
- 相手が現金での支払いが難しい場合は、他の資産(不動産や動産)での支払いに応じる
- 相手が不動産の使用継続を望むが手持資金がない場合は、分割払いを検討する
- 相手の経済状況を考慮すべき場合は、請求額を一部減額して早期解決を図る
調停は当事者双方が納得しなければ成立しません。
双方が一切譲歩しないと頑張れば調停がまとまらず、訴訟に移行せざるを得なくなります。
訴訟になると、かかる時間や労力が大幅に増えるだけでなく、費用も余分にかかりますので、多少譲歩をしてでも調停を成立させた方がよいケースもあります。
弁護士と相談する
遺留分侵害額請求の調停を申し立てる前に、弁護士と相談しましょう。
調停委員は双方の主張を聴きますが、法律的な正否を判断するものではないため、調停の進め方を熟知した弁護士に依頼した方がよいです。
弁護士であれば、調停で主張すべきポイントや集めるべき証拠、判断が難しい相手方に譲歩できる範囲などについて適切なアドバイスができます。
特に、遺留分の正確な判断のためには相続財産の評価方法や税金など、専門的で幅広い知識が必要です。
相続に熟知した弁護士であれば適切に対応できます。
早い段階から弁護士に依頼していれば、訴訟に移行する場合も、それまでの経緯を踏まえて対応してもらえます。
弁護士の中でも相続問題の経験が豊富な弁護士を選ぶことが重要です。
遺留分侵害額請求の調停前置は弁護士に相談しよう

遺留分侵害額請求は弁護士に相談した方がよいです。
弁護士に相談すれば次のようなメリットがあります。
- 相手方と直接話をしなくてよい:相手方との交渉はすべて弁護士が行うので、近親者と直接交渉するストレスから解放されます。
- 権利行使のタイミングを逃さない:請求権を適時適切に行使しないと時効により消滅してしまいますが、弁護士に任せれば心配はいりません。
- 適切な遺留分を請求できる:遺留分の額はケースによって異なりますが、請求者のために最適な遺留分を請求できます。
- 十分な調査と適切な権利行使が可能:請求対象となる遺贈等の有無などの調査、請求先・請求内容を適切に判断できます。
- 法的対応をスムーズにできる:交渉段階から弁護士に依頼しておけば、法的手続きも視野に入れた交渉ができ、出廷等も弁護士が対応可能です。
まとめ

遺留分侵害額請求における調停前置についてまとめます。
- 遺留分侵害額請求の調停前置とは、裁判を起こす前に原則として調停を先に申し立てなければならないこと
- 調停のメリットは、冷静に話し合える・解決案を提示してくれる・円満に解決を図れる・手続きが簡単・費用が安い・判決と同じ効力があること
- 調停のデメリットは、合意できないと調停不成立・意見が通るとは限らない・手間と時間がかかること
- 遺留分侵害額の請求調停は、裁判所に調停申立て後、調停期日が何回か設定され、調停委員の仲介で合意形成を目指す
- 遺留分侵害額請求調停をスムーズに進めるポイントは、資料を準備しておく・可能な妥協点を決める・弁護士と相談すること
- 弁護士に相談すれば、相手と直接話をしなくてよい・権利行使のタイミングを逃さない・適切な遺留分を請求できる・法的対応をスムーズにできるなどのメリットがある
遺留分侵害額請求を迅速かつ効果的に進めるためには、調停前置についての正しい理解など、法律に関する専門的な知識が必要です。相続に関する問題は、法的知識
が必要なだけでなく、面倒な手続きが多く、厄介なトラブルも起こりやすいものです。
遺留分侵害額請求の調停など、相続について、わからないことやもめごとがあるときは、相続問題に詳しい弁護士に早めに相談しましょう。
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