遺留分侵害額請求の時効はいつ?起算点と権利を行使する注意点を解説

遺留分侵害額請求は、時効によって権利が失われるリスクがあります。
しかし、時効の期限や進行が始まる起算点などを正しく理解すれば、侵害された遺留分を消滅時効にかかることなく取り返せるのです。
本記事では、遺留分侵害額請求に関する時効の仕組みをわかりやすく解説し、具体的な対応策をお伝えします。
法改正のあった2020年3月31日以前に遺留分侵害額請求権を行使した方の、金銭債権の時効についても解説していますので、最後までお読みください。
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遺留分侵害額請求の基礎知識

遺留分侵害額請求とは、民法で定められた遺留分を下回る割合しか相続を受けられないときに、不足分の金銭を請求できる権利です。
法定相続人となる配偶者や子ども(代襲相続人を含む)、直系尊属には、相続財産の一定割合が遺留分として保障されています。
そのため、被相続人の遺言や生前贈与によってこの権利が侵害された場合、救済措置として「遺留分侵害額請求」を行使できます。
遺留分とは
遺留分は遺産相続で、被相続人の配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属に対して法律で保障された最低限の取り分です。
被相続人は遺言や生前贈与で財産を自由に処分できますが、この遺留分により一定の制限が設けられています。
相続財産に対する遺留分の割合は、以下の通りです。
法定相続人の組み合わせ | 遺留分の割合 | 備考 |
---|---|---|
子のみ | 子:1/2 | 複数いる場合は人数で等分 |
配偶者と子 | 配偶者:1/4、子:1/4 | 子が複数いる場合は人数で等分 |
直系尊属のみ | 直系尊属:1/3 | 父母がいる場合には祖父母には遺留分の権利はない |
配偶者と直系尊属 | 配偶者:1/3、直系尊属:1/6 | 直系尊属は同順位で等分 |
配偶者のみ | 配偶者:1/2 | |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者:3/8、兄弟姉妹:なし | |
兄弟姉妹のみ | なし |
遺留分は、遺留分権利者の有無や組み合わせによって、保障される割合が定められています。
遺留分侵害額請求とは
遺留分侵害額請求は民法第1046条に定められた制度で、遺留分権利者が遺言や生前贈与により遺留分が侵害された場合、受遺者や受贈者に不足分の金銭支払いを請求できる権利です。
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
出典:e-Govポータル|民法
たとえば、被相続人が遺言で財産の大部分を長男に相続させ、配偶者の遺留分が侵害されたケースでは、配偶者は受遺者である長男に遺留分侵害額の支払いを請求できます。
また、被相続人の生前贈与により遺留分が侵害された場合、受贈者に対しても請求が可能です。
遺留分侵害額請求については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:【遺留分侵害額請求をわかりやすく解説】計算方法・請求のやり方・注意点
遺留分侵害額請求には時効がある

遺留分侵害額請求には、3つの期間制限があります。
【時効】遺留分の侵害を知った時から1年
遺留分を請求できる権利は民法第1048条の規定により、次の2つの事実を知った時から1年で時効にかかります。
- 相続が開始したこと
- 遺留分を侵害する贈与や遺贈があったこと
第千四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
出典:e-Govポータル|民法
たとえば、被相続人の死亡時には遺言の存在を知らず、3カ月後に遺留分を侵害する内容の遺言が見つかった場合、その発見時点から1年以内に請求する必要があります。
【除斥期間】相続が開始されてから10年
遺留分侵害額の請求には、相続開始(被相続人の死亡時)から10年という除斥期間が設けられています。
この期間が経過すると、遺留分侵害額請求権は消滅します。
10年の除斥期間は、以下の場合でも例外はありません。
- 遺留分権利者が相続開始を知らなかった場合
- 遺留分侵害の事実を知らなかった場合
相続開始から10年が経過すると、遺留分権利者にやむをえない事情があったとしても、権利は行使できなくなります。
遺留分の時効について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:【遺留分の時効は1年または10年】注意点・時効を中断する方法
【債権消滅時効】遺留分侵害額請求権を行使してから5年
遺留分侵害額請求権は2020年4月の法改正で、遺産そのものを取り戻す権利ではなく、金銭を請求する権利に変わりました。
この金銭債権には、民法第166条第1項に基づく債権時効の適用を受けます。
遺留分侵害額請求権の時効期間は、権利の行使が改正民法施行日の前後で異なります。
具体的な時効期間は、以下の通りです。
- 2020年4月1日以降に請求権を行使した場合:5年の時効期間
- 2020年3月31日以前に請求権を行使していた場合:10年の時効期間
遺留分侵害額請求権を行使した後は、上記の期間内に請求額の支払いを受けるか、時効の更新手続を取る必要があります。
債権の消滅時効は請求権の行使により、金銭債権が確定した時点から進行し、裁判上の請求や侵害した側の債務の承認により更新されます。
遺留分侵害額請求については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:【遺留分侵害額請求の基礎知識】対象となる財産・手続きの方法・注意点
遺留分侵害額請求の消滅時効と除斥期間の起算点

遺留分侵害額請求の消滅時効の起算点は、次の通りです。
消滅時効前に遺留分侵害額請求を行使するには、時効までの起算点を明確に把握しましょう。
相続の開始
相続は被相続人の死亡と同時に開始されます。
相続の開始とは、被相続人の死亡により、その財産や権利義務が相続人に継承されることです。
相続開始日の具体的な基準は、以下の通りです。
自然死亡の場合 | 死亡診断書に記載された日付が基準 |
認定死亡の場合 | 戸籍に記載された死亡日が相続開始日 ※事故や災害で死亡したことは確実であるが、遺体が見つからない場合などが該当 |
普通失踪の場合 | 生死不明となってから7年が経過した日(民法第30条1項) |
特別失踪の場合 | 危難(戦争・船舶遭難など)が去った日(民法第31条) |
相続開始日は、遺留分侵害額請求権の行使期限の起算点となるため、正確に把握する必要があります。
遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時
遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ったときとは、遺留分権利者が自身の遺留分が侵害されている事実を具体的に認識した時点を指します。
たとえば、以下のような場合が該当します。
- 遺言書の開示により、他の相続人への遺贈が自身の遺留分を侵害していることを知った時点
- 被相続人が他の相続人に対して行った生前贈与や死因贈与により、自身の遺留分が侵害されていることを把握した時点
なお、時効は単に贈与や遺贈の存在を知っただけではスタートせず、その贈与や遺贈により自身の遺留分が侵害されていることを具体的に認識した時点から時効が進行します。
ただし、遺留分侵害を知った日の証明が難しいため、被相続人の死亡から1年以内に権利を行使するのが安全です。
お早めに専門家にご相談ください。
遺留分侵害額請求の時効を中断する方法

遺留分侵害額請求権の時効は、相続開始と遺留分侵害を知った日から進行を始めます。
時効を止めるには、以下の方法があります。
内容証明郵便で遺留分侵害額請求を意思表示する
遺留分侵害額請求権は、遺留分を侵害されている相続人が、侵害者に対して請求の意思を明確に伝えることで行使できます。
意思表示の方法に法律上の制限はありませんが、後のトラブルを防ぐためにも、内容証明郵便の利用が推奨されます。
内容証明郵便は、いつ、どのような内容を相手に通知したかを証明できる公的な手段です。
具体的には、以下の事項を記載した内容証明郵便を送付します。
- 遺留分侵害額請求を行う意思
- 遺留分を侵害されている事実
- 請求者の氏名・住所
- 遺留分を侵害した側の氏名・住所
遺留分を侵害した相手に対する意思表示は、遺留分侵害額請求権の行使を意味し、時効による遺留分侵害額請求の権利が消滅するのを防ぎます。
その後、当事者間で話し合いがまとまらない場合は、裁判手続に移行します。
除斥期間は止められない
除斥期間は、時効とは異なり中断や停止ができません。
除斥期間とは権利を行使しないまま、定められた期間が過ぎてしまうと、権利が消滅する制度です。
時効と似ていますが、性質が異なる点があります。
時効は裁判や債務の承認などによって中断が可能な場合があるのに対し、除斥期間は権利を行使しない限り進行を止められません。
遺留分権利者が相続の開始を知らなかったり、遺留分の侵害を認識していなかったりしたとしても、除斥期間が終わると遺留分侵害額請求権の行使ができなくなります。
そのため、遺留分権利者は、被相続人の死亡を知った時点で速やかに権利行使の要否を検討し、必要な場合は期間内に遺留分侵害額請求の意思表示をしてください。
金銭債権の消滅時効を中断するには裁判を起こす
遺留分侵害額請求の意思表示をした後、その金銭債権は5年の消滅時効が適用されます。
この期間内に裁判などで請求を行わないと、侵害された遺留分を取り戻せなくなる可能性があります。
ただし、金銭債権の消滅時効は更新が可能です。
時効の更新には、以下のいずれかの方法を取る必要があります。
訴訟提起 | 金銭支払いを求める裁判を提起する |
債務の承認 | 遺留分を侵害した側(債務者)から債務の存在を認めてもらう |
これらの手段により、時効期間はリセットされ、新たに5年の期間が始まります。
遺留分侵害額請求権を行使する際の注意点

遺留分を侵害された相続人の中には、日頃、親族と疎遠で被相続人が亡くなったことを後から知ったり、遺言が正しく作成されたものか疑問に感じたりする方もいるでしょう。
ただし、遺留分権利者にさまざまな事情があっても、遺留分侵害額請求を時効前に行わないと、権利が行使できなくなってしまうケースがあります。
そのため、遺留分侵害請求権を行使する際は、以下の点に注意が必要です。
可能な限り相続開始から1年以内に行使する
遺留分侵害額請求の意思表示は、相続開始の1年以内に行うのが望ましいです。
なぜなら、遺留分侵害請求が、相続開始から1年が経過してしまうと意思表示のタイミングが争われてしまうケースがあるからです。
遺留分権利者が遺留分の侵害を知った時期が争点となると、それを立証する必要があり、証明が困難な場合もあります。
そのため、できるだけ被相続人が亡くなって相続が開始されてから1年以内に、内容証明郵便で遺留分侵害額請求を意思表示するのがよいでしょう。
関連記事:遺留分侵害額請求は自分でできる?手続きの流れややり方をわかりやすく紹介
遺産分割協議や遺言の無効を争っている間にも時効は進行する
遺産分割協議や遺言の無効を争っている間であっても、遺留分侵害請求の時効が進行し続けます。
そのため、遺言の有効性に疑問があり、無効を主張する場合でも、同時進行で遺留分侵害額請求の意思表示をしておきます。
これは、遺言が有効であると判断されたときに備えるための保全措置です。
遺留分侵害額請求の時効は、相続開始と遺留分の侵害を知った日から1年と期間が短く、スピーディーな対応が求められます。
遺留分が侵害されていると認識したときは、できるだけ早く相続問題に強みのある弁護士に相談してください。
関連記事:【遺留分の請求】弁護士費用が安い事務所の選び方とは!費用の内訳や安く抑える方法も
民法改正前に発生した金銭債権の消滅時効は10年
2020年の民法債権法改正前(2020年3月31日以前)に遺留分侵害額請求を行っている場合は、権利を行使できる時から10年の消滅時効が適用されます。
債権の消滅時効における起算点の考え方が民法改正により以下の通り変わったため、遺留分侵害額請求権の行使時期によって時効期間が変わります。
民法債権法改正前の内容は、以下の通りです。
- 原則:権利を行使できる時から10年(改正前民法166条1項)
- 例外:商行為による債権5年(改正前商法522条)、職業別の時効期間(改正前民法169条~174条)
2020年4月施行の債権法改正後は、次の通りです。
- 原則:権利を行使できることを知った時から5年(主観的起算点)
- 例外:権利を行使できる時から10年(客観的起算点)
以上により、2020年3月31日以前に請求権を行使していれば10年、同年4月1日以降に請求権を行使したときは5年が時効です。
もし、2020年3月31日よりも前に遺留分侵害額請求の意思表示を行ってから10年以内であれば、時効は完成していない可能性があります。
遺留分侵害額請求の時効まで期間は短い!早めに弁護士に相談しよう

遺留分侵害額請求は侵害した側がすんなり請求に応じてくれないケースが多く、調停の申立てや訴訟の提起が必要なケースもあるため、弁護士に依頼するのが賢明です。
弁護士は法的知識に基づいた遺留分の複雑な計算や、遺留分侵害額請求をするための書類作成を代行します。
また、遺言の有効性に疑問があり、無効を主張する場合でも、権利保全のため同時に遺留分侵害額請求権の行使も可能です。
遺贈や贈与などで遺留分の侵害があった場合は、迷わず弁護士に相談してください。
▼こちらの記事で、遺留分の計算方法について詳しく解説しています。
遺留分侵害額請求は、かなり短い間での戦いとなります。
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まとめ
本記事では、遺留分侵害額請求の時効について解説しました。
- 遺留分とは一定の相続人に法的に保障される権利で、遺留分侵害額請求とは遺留分が侵害されたときに行使する請求権である
- 遺留分侵害額請求権を行使しないと侵害を知った時から1年で時効を迎える
- 遺留分侵害額請求の除斥期間は10年で、侵害を知らなくても時効になる
- 遺留分侵害額請求権を行使して得た金銭債権の時効は5年
- 遺留分侵害額請求の消滅時効と除斥期間の起算点は相続開始及び遺留分を侵害されたことを知った時
- 遺留分侵害額請求は侵害した相手に意思表示すれば時効の進行が止まる
- 相続開始や遺留分侵害の事実を知らなくても除斥期間は止められない
- 金銭債権の消滅時効をリセットするには、支払いの裁判を起こすか、侵害した側が債務を認める必要がある
- 遺留分侵害を知った日の証明が難しいため、被相続人の死亡から1年以内に権利を行使するのが望ましい
遺留分を侵害した側からスムーズに支払いに応じてもらうためにも、交渉は弁護士に任せるのがよいでしょう。
権利を守るためには、知識と力が必要です。
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